心さわぐ、山小屋雁峠山荘

5月も今日で終わりだ。体力消耗戦のような5月であった。もう、先々週になってしまうのだが、5月21日に久しぶりに山に行ったのが今月のニュースみたいなものだ。

そもそもは、多摩川の源流の水を飲みに行くのが目的だったのだが、私は山小屋が印象に残ってしまったのである。多摩川の水源、笠取山下にある雁峠山荘である。

開けた、斜面を登ってくる風があたらないところにひっそり建つ。無人小屋になっているので、刈り払われていないクマザサの海を泳いで小屋に近づくのもなかなか雰囲気があるというものだ。

2階建てだが小さい小屋だ。夜中に幽霊が出るかもしれないが、泊まってみたい魅力がある。しっとりした空気があるのだ。ランプとウイスキーとFMラジオと本と食料があればしばらく滞在したいような気もした。

私ときたら臆病者で、子供の時に怪奇映画を見るとトイレに一人では絶対行けなかったタイプなのだが、なぜか後年一人で小屋番などをやることになり、かなり免疫はできた。しかし、こういう状況でしばらくと暮らすと、幽霊のお姿は見ないまでも変わった経験はするものだ。

小屋というのは何で魅力があるんだろう?未完成の生活の場だからだろうか。仮の住まいというやつは、妙に心を軽くするのである。たいていの子供は物置小屋みたいな空間が大好きで、私もそうだった。

図書館での予約の順番が回ってきて、「0円ハウス 」(坂口恭平/リトルモア)という本を借りてきた。早稲田の建築科に学んだ著者が撮影し、スケッチした、名古屋、大阪、東京のホームレスの住居を集めた本である。もちろん、多摩川のもある。

ホームレスの人たちの中には完全に精神のバランスを崩した人も見かけるが、この本を見ると、とても上手に住居を作り整理整頓能力を発揮している人もいる。そんな空間を眺めると、とても元気がでる。しかし、それを普通の家やマンションの一室に移したら間違いなくひどく色あせてしまうのだ。仮の宿特有の力が働いているのかもしれない。

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