急に涼しくなった。今朝は、すごく久しぶりに地震雲のような細長い雲が浮かんでいた。
お盆になると幽霊番組をやるので気がついたら見る。これは子どもの頃から変わらない。しかし、最近のは、スマホで動画を録っていたらこんなのが映っていたというのが多く、ほとんど作り物だとわかるので面白くない番組ばかりだ。
私の年代は、小学生の頃につのだじろう氏の「恐怖新聞」や「うしろの百太郎」を読んでいた世代だ。本当に怖い漫画だった。番組制作者に読ませてやりたい。神保町で見かけた。全5巻だったのか。
そんな中でも、BSプレミアムの「異界百名山」はなかなか面白かった。怖さにはツボがある。
私は、一人で山小屋の小屋番をやっていたことがある。山の生活は、確かに不思議なことがある。しかし、まったくの一人だと夜「出るかも知れない」という緊張感が常にあるので、不思議なことはあまり起きない。
もう少し正確にいうと、「出るかもしれない」という怖さにつながる気分を無意識に排除するのだ。
しかし、繁忙期に短期間手伝いが来たり、また、よその小屋の荷揚げを手伝った時など、人と一緒にいるという安心感があると緊張感が緩み、変わったことが起きる。
ただ、私は幽霊のお姿を見たことがないので、きっとこの先もずっと見ないと思う。同じ山小屋を翌年管理した人は、「登山靴だけが歩いて小屋の中に入ってきた」とおそろしいことを言っていたので、私よりそちらの感度がよいみたいだった。
私がはっきり体験したのは、2回。
夏の繁忙期に手伝いが来て、たまたま天気がひどく悪くて宿泊客が誰もいない日があった。夕食を早く済ませて、こたつに入ってウイスキーを飲みながら、二人で知っている「怖い話」をありったけ披露し合っていた。
しばらくすると、積雪期の入口である2Fのドア付近、ちょうど我々のいる部屋の真上から、登山靴で「ドンドンドン」と何歩か歩いた大きな音が聞こえた。雪がない夏に、そこから入って来ることは不可能に近い。ドアは施錠してある。そして、もちろん、誰もいないのである。
山歩きをする人は、登山靴で歩く音がスニーカーと違って、「ドンドンドン」と聞こえるのがお分かりになると思う。
こんなことが世の中にあるのかと一瞬おののくのだが、実は、そんなに怖くない。
その後、小屋閉めの時期に、その山小屋グループの一番大きな小屋の荷揚げを手伝った。正月にも営業するのと翌年の小屋開けのために米など基本的な食料を揚げておく必要があるのだ。
荷揚げでくたびれたので自分の小屋に帰らず、風呂にも入らせてもらってその小屋に泊まることにした。寝床は1Fの大広間のこたつだ。疲労困憊しているのでビールを飲みながら夕食を食べてすぐに寝てしまった。
この時は、宿泊客はおらず、男性の小屋番が不在で女性の小屋番が一人。女性の小屋番は自分の部屋があるのでそこで寝ている。
ふと、目を覚ますとなにやら気配がおかしい。
2Fの大きな客間で子どもが走り回っているような音がする。「トトトトトト・・・」腕時計を見ると午前2時だった。「丑三つ時かよ」と思ったことを覚えている。
そのうち、小屋の回りを登山靴で歩く「ドンドン」という音が聞こえ始めた。リアルなのは、小屋の周辺に落ちているトタンの切れ端を踏む音まで聞こえるのだ。
さらに、小屋の入口に置いてある薪ストーブの火箸がカチカチ音を出し始め、その奥にある物置から、道具箱の中をガタンガタンとひっくり返す音まで聞こえてきた。
道具箱の中には、トンカチやノコギリ、バール、スパナなど重い工具がいろいろ入っている。山小屋にもネズミはいるが、街でみかけるドブネズミよりもはるかに小さく、そんな小さなネズミが動かせるような道具ではない。
そして気がつけば、まるで、ソロ楽器が順番に音を出して最後は合奏になるみたいに、すべての音が聞こえてくるようになった。
その時の私の気持ちは、「世の中にはこんなことがあるんだ」と思っただけ。怖くはなかった。
音が収まってから、ヘッドランプをつけてトイレに行ってからもう一度寝たくらい余裕があった。
しかし、毎晩これが続いて、私の心が「怖い」と思い始めると、その後の展開は次第に変わっていくような気がする・・・‥。怖いと思い始めると、あちらの世界に波長が合うようになるのではないかと思うのだ。
今日は朝の気温が24℃で湿度が50%だった。エアコンを切って窓を全開にして久しぶりに爽やかさを味わった。
高温多湿の環境では、人は勤勉に働けない。今年の夏は特にそれを感じた。35℃が当たり前の気温になったのも驚いたが、それよりも8月に入ってからの湿度の高さには参った。体が消耗する。
今日も30キロ走った。
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